2020-07-25
テーマ:寝たきりだった父のこと/要介護5
のどが渇く、今の季節にお伝えしておかなきゃいけないことを思い出しました。
それは『水分不足が妄想を引き起こす』ということです。
これ、父が退院して家に戻ってきてから、その『妄想』が劇的に改善したことで判明したんですね。
壊れてしまった父が、知的な父に戻ってビックリ❗️
いきさつはこうでした。
父が脳こうそくで倒れて救急病院に入院していた37日間。
この間は父の「妄想」はまったく起きませんでした。
ずっと点滴をしていたから、体内に水分がたくさんあったんですね。
そこから、リハビリ病院に転院して6ヵ月。
ここで父はだんだんおかしくなっていきました。
この病院では、半身麻痺があって末期の肺がんだった父の「誤えん」を防止するために、水にとろみが付いていました。
その水も、手が届くところに置かれてるわけではなく、看護師さんが決まった時間に持ってくる。
水を飲むことを厳しくコントロールされてたのね。
理由は、「いきなり誤えんして呼吸困難や肺炎になったら大変」だから。
病院の責任になる。
しかたないと言えばしかたない。
だから飲む量が極端に少なくなった。
父は気にするふうでもなく、
「あんまり飲みたくないし、トイレをしたくなっちゃうと若い看護婦さんに悪いからね」
と笑った。
日本医療栄養センター所長で医学博士・管理栄養士の井上正子医師によると、
高齢者は、
• のどの渇きを自覚しにくい→ 活動量や筋肉量が低下するため。
• 水分摂取を自制する→ 介護の手間を減らそうとするため。
だからこそ、
- 身近に高齢者がいる場合には、こまめに水分補給できるように配慮しましょう。
ほら、やっぱりそうだよね。
でも、父のように施設側でコントロールされてると、こまめに飲ませることなんてできない。
わたしがお見舞いに行ったときは、父の好きな甘いジュースを飲ませたけど、短時間でそんなに飲めるものじゃないし。
そのうち、父の声がかすれてきて、反応がにぶくなってきた。
ある日、父が細い声で、
「ほら、あいつ。あいつが夜中に女を集めて、賭け事をしてるんだ」と同じ病室の患者さんを指さした。
どう見ても起き上がって何かできるような状態じゃない寝たきりの患者さん。
父はボケてきたんだ。。そう思った。
それからです。
私がお見舞いに行くと、
「おとといは、株の話をしてから大豆相場の話しもしてたんだ」
「あいつ、だいぶ金を隠し持ってる。夜中に看護婦さんを集めて金を配ってた」
突拍子もない話。でも、父はすごく真剣だった。
「あの人たちがそんなに儲かってるなら、一枚かませてもらったら❓」なんて話を合わせてみたものの、
壊れていく父に接するのが、怖くてしかたがなかった。
しか~し❗️
このあと、退院して自宅に戻ったらみるみる回復しましたんです。
その理由はズバリ❗️
思いっきり水分を取らせたから、です?
新しく主治医になった在宅診療専門の女医さんは、血液検査の結果と父の腕の細い血管を交互に見てからこう言った。
「水分が足りない。水分を取らせなさい」
「水にとろみを付けているとお腹がいっぱいになってたくさん飲めなくなる。だから、家族とヘルパーが気を付けながらジュースでもなんでもいいからどんどん飲ませなさい」
女医さんは、
- 意識しなくても自然に失われていく汗=不感蒸散(ふかんじょうさん)は1日に700㏄になる。
- 脇や腕が汗ばんだら、もう350ccが蒸発している。
と教えてくれた。
どひゃ❗️気付かないうちに、1リットルの水分がなくなってるってことだ❗️
「だからどんどん飲ませないと、水分が不足してまた脳こうそくを起こすわよ。脳こうそくの3回目はアウトだからね」
そして、
「水を誤えんしないように、毎日トレーニングしなさい」と、すごく簡単な方法を教えてくれた。
- ベロを思いきり出してひっこめる。ベロを出せなくなると飲み込む機能が低下してる証拠。
- 大声で「あいうえお」を言う。特に「さしすせそ」は大切。「せそ」が言えなくなると水に「とろみ」を付けなきゃならなくなる。
女医さんは、「現場力が大切よ。関係者みんなで、お父さんのそばにいる人が必ずトレーニングさせること」
はい❗️先生の言うことを聞いてヘルパーさんたちと毎日実践しました❗️
4/16から「水分+ベロと発音のトレーニング」を始めたら、7日目の4/23日には腕の血管が浮き上がってきた。
「水分が取れている証拠ね」女医さんはニコニコ顔になった。
それからです。
壊れていた父が、みるみる知的な父に変わっていきました。
まともな会話ができるようになった❗️
テレビを見てちゃんと反応してる❗️
そして、ウケないジョークを飛ばしてから照れる❗️昔の父だ。
女医さんは、さらにビックリなことを教えてくれた。
「水分不足でおきる妄想は不思議なのよ。どんな人でも、妄想の内容がとても似ているの」
- お金の妄想
- 子どもにお金やお菓子をばらまく妄想。
- 虫がわく妄想。
おおっ、まさしく❗️
父の妄想には確かに「お金」と「ばらまき」が出てたっ❗️
先生、すごい。
脱水と妄想(せん妄)の関係については、日本訪問看護振興財団の 『防ごう! 守ろう! 高齢者の脱水』 にはっきり書いてありました。
- 脱水によるせん妄は見逃されやすい。
突然わけのわからないことを叫んだり、うろうろ動きまわったり、いる はずのない人や物が見えたり(幻覚)、聞こえるはずのない音が聞こえたり(幻聴)します。
病気の悪化や服用している薬の副作用、手術後などにせん妄が起こることはよく知られていますが、脱水によるせん妄は見逃されやすいので要注意です。 - 脱水とせん妄はともに悪化する
脱水が進行するとせん妄が起こります。せん妄が起こると、さらに脱水が悪化するとともに、せん妄も重症化。命を失うこともあります。こうした脱水とせん妄の負のスパイラルを断ち切ることが大事です。
うわっ❗️脱水と妄想(せん妄)が進むと命を失うこともあるんだ❗️
父の水分不足を食い止められて良かった。
この時から、会った人には
「汗ばんだら350㏄がなくなってるから、すぐに飲んだ方がいいよ」
と言いまわっています。
今では私のかかりつけ医になってくれた女医さん。
先生の教えは海よりも深かった❗️
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