2020-06-07
テーマ:わたしのがん治療

もしあなたが、つるっぱげの写真を見せるなんて自分の感覚からして理解できない、と思う方は、ここでブログを閉じてください。

さて、
わたしがなぜ化学療法で脱毛したハゲ頭の写真を出し続けているかというと、
がん患者さんの「ハゲ写真」を見たことで、わたし自身が病気に立ち向かう勇気を得たからです。

わたしが初めてがんになった6年前、アメリカ出張から帰国したボスが送ってくれた雑誌 『 People 』(2014.8月号)

ボスは、
「アメリカのPEOPLE誌で全米モーニングショー、一番キャスターJoan Lundenが、優雅に、美しく、しかも勇敢に乳がんと闘っている記事見つけた」 とメッセージをくれた。

入院中だったわたしは、送られてきた雑誌の表紙を見てオイオイ泣きました?

(出典元:Instagram @joanlunden https://www.instagram.com/p/BU9VUemgBWl/?utm_source=ig_web_button_share_sheet)

がんになって初めて思いっきり泣いた?
泣いたあと、「すがすがしい。綺麗だな」そう思い、ふつふつと元気がみなぎってきた。

ふつふつ、ふつふつ。

この時わたしは、左胸にあった「がん」を摘出するとともに、転移していたリンパ節も切り取り、それと同時に切り取った胸にシリコンインプラントを挿入する「同時再建手術」を受けていました。
手術から8日目。
まだ身体にドレーンという血液の排液チューブが刺し込まれていて、ダメージ最強な時。

手術前の化学療法で髪の毛はほとんど抜けていました。

そこにこの写真

(出典元:Instagram @joanlunden https://www.instagram.com/p/BZ6GiD4gDg-/?utm_source=ig_web_button_share_sheet)

わたしのボスは、ホリエモンが逮捕されたライブドア事件のあと、社長に就任した平松庚三氏。
ご存じの方も多いと思いますが、実にスケールの大きい実業家です。

世界的企業のCEOを経験し、ライブドア後はITベンチャーを立ち上げ、ハーレーを乗り回し、セスナも、機関車も運転し、宇宙旅行も申し込んでいる。

世界中に部下を持つ大親分。

ボスは、化学療法で髪が抜けたわたしを「タコ坊主のねえちゃん」と呼んで、
「いいか、みんなの前でそう呼ぶぞ。」と。
「みんな、お前を心配してる、だからその頭を笑い飛ばすぞ」と、真剣なまなざしで言った。

気持ちが楽になったなぁ。
わたしがゲラゲラ笑うのを見て、みんなもゲラゲラ笑った。
オフィスに行くのが楽しくなった。

初めてのがんの時には、自分自身の心とからだを今までどおりに保とうとして、あえて仕事仲間や取引先と積極的に(がんばって)交流していました。

ボスは「いいか、人から心配されたら、治療で髪の毛をなくしたけどシャンプーが2滴ですむようになった、と言って笑うんだぞ」
また真剣なまなざしでそう言った。

ボスの予想どおり、取引先の皆さんは
「だいじょうぶですか?」と心配そうに声を掛けてきた。
わたしはすかさず、
「シャンプーは2滴ですむし、顔を洗うついでに頭も洗える。まつ毛もないからマスカラも減らないので便利になりました」 と笑いながら言った。

皆さん、「そうなんですか?」とびっくり。
少し髪の毛が後退しつつある男性のひとりは、「また生えてくるんでしょ?僕から見たらうらやましいよ」
と言って、ゲラゲラ笑って下さった。

わたしが一番笑った

このおかげで、心がほぐれていき、特段の問題も起こさずに仕事と抗がん治療の両立がはかれました。
→後日談:取引先にあとから教えてもらったのですが、この時の私は「すごく弱々しくてなんて声をかけていいかわからなかった」そう。

こんなふうに仕事を続けながら、分子標的薬(ハーセプチン)の点滴治療を17クール終えた翌年。
全摘した左胸に、局所再発しました。

まさかの再発。
また同じ治療が始まる。。
また髪の毛が抜ける。。


「でも1回経験したから何が起きるかわかる。だから怖くない」
「大丈夫」
そう自分に言い聞かせて、再びがんの摘出手術を受け、また強烈な化学療法を受け始めました。

2回目はものの見事にツルツルになった。


でも、もうみんな「タコ坊主のねえちゃん」と笑ってくれなくなりました。
再発=もうおしまいだな、って思われちゃったから。

その上、化学療法で使ったタキサン系の抗がん剤、タキソール(パクリタキセル)の副作用がひどくてオフィスに出勤できなくなっていった。

みんなと過ごすことができなくなり、ゲラゲラ笑うことができなくなった。

そこで思い出したのが、あの雑誌のこと。
今回は、あのキャスターみたいに写真を撮ってみよう。
最悪の状態を笑顔で撮って、自分で元気になろう、自分を救おう。

そう思い、カメラマンに撮影してもらいました。

キャスターと同じ、白いシャツにピアス。
マネっこ

写真を両親に見せたら (まだ2人とも介護前)、
「とてもいいね」と。
親しい友人も「すごくいいね」と言ってくれた。

そこで、自分の誕生日にfacebookに出してみました。
健康なみんなはなんて思うだろう、と恐る恐る。

そうしたら、
「きっとたくさんのがん患者さんのちからになるよ」「その強さに勇気をもらった」 とコメントがあって。
「あれ❓私と同じだ❗️」 と。

あの時のキャスターの写真を見た時にわたしが感じたこと、それをそのまま健康な友人たちが感じてくれている。
がん患者じゃなくても同じことを思うんだ、って。

そこで、ハゲ写真をおもてに出していくことにしました。

 https://twitter.com/sonoingsonoing

もともとは、自分の心を奮い立たせるために、元気になるために撮った写真ですが、

今では、

  • どこかにいる、乳がんになりたての患者さんで、「治療が怖い」と思っている方
  • どこかにいる、髪を失うのが怖くて、抗がん治療を拒否しようとしている方(だめだよ)

そんな方たちに、

ここに化学療法のダメージを受けた仲間がいるよ」
「だから大丈夫だよ」
そんなメッセージを込めて出しています。


ただし受け止め方は人それぞれ。
冒頭で触れましたが、「こんな姿を出すのは感覚的に信じられない」「見せるな」
というご意見があるのは承知しています
→実際にいただいています。

でも見て。

今年、アメリカのマテル社がハゲ頭のバービーを発表しました。
「義肢や髪の毛のないバービー人形、今年発売へ」 
(2020.1.30 https://sptnkne.ws/BkPH

(出典:PHOTOGRAPH BY MATTEL)

マテル社は、
「美しさや包括性に対する多様な見方を反映するため、新シリーズのバービー人形を発売する」
というメッセージを出しています。

ね❓
少しづつ、少しづつ意識が変わってきたのは間違いないよね。
だからわたしも、以前のわたしがふつふつと元気を回復したことを思いながら、おのれのハゲ写真を出し続けます。
いやな方は、遠慮なく去って行ってね。

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